昭和を代表する作家「太宰治」の名作集!
39歳という短い生涯を終えた奇才・太宰治の本質が垣間見られる秀逸の物語16篇。
太宰治が描くありのままの人間の姿 — 優しさ、強さ、恥じらい、虚栄心、嫌悪…
デカダンを自任しつつもナルシシズムを根底に抱え、
常に悩み続け、不滅の青春文学を遺して自ら命を絶った太宰…
短篇の名手によるその文学は、現代においても幅広い年齢層の熱烈なファンが多く、太宰の生涯・作品を愛して止みません。
◆目次
・人間失格
・走れメロス
・女生徒
・ヴィヨンの妻
・斜陽
・お伽草紙(新字旧仮名)
・パンドラの匣
・桜桃
・ロマネスク
・富嶽百景(新字旧仮名)
・津軽(新字旧仮名)
・正義と微笑
・新釈諸国噺
・惜別
・風の便り
・冬の花火
【人間失格】
太宰治の遺書的作品とも言われている長編小説で、3章で構成。
悲惨で救いようのない男の話ではあるが、深いテーマの傑作。
【走れメロス】
親友のセリヌンティウスを助けるためにメロスが全力疾走する友情の物語。
多くの読者を感動させてきた名作。
【女生徒】
思春期の少女が持つ自意識の揺らぎと、その時期に陥りやすい、厭世的な心理を繊細な筆致で描き出し、当時の文芸時評で川端康成たちから激賞され、
太宰の代表作の一つとなった。
【ヴィヨンの妻】
新生への希望と、戦争を経験しても変らぬ現実への絶望感との間を揺れ動きながら、命がけで新しい倫理を求めようとした晩年の文学的総決算ともいえる代表的短編集。
【斜陽】
没落していく人々を描いた太宰治の代表作。文壇から高い評価を得たヒット作でもある。
立場は違えど庶民とは違う階級にあった四人の、四者四様の滅びの様が描かれ、滅びの中の美しさが描かれている。
【お伽草紙】
日本の昔話などを題材に執筆した短編小説集。
大胆で自虐的な空想が太宰の深い人間洞察を反映しており、他のパロディと呼ばれる作品の中でも傑出した作品と言える。
【パンドラの匣】
太宰の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望にみちた青春小説。
【桜桃】
妻も三人 の子も仕事もみんな大切に思っているのに、自ら夫 婦関係を壊してし まうジレンマを抱えた父親の姿を 描いた作品。
【ロマネスク】
江戸時代の変わった男たちの掌編、仙術太郎・喧嘩次郎兵衛・嘘の三郎 3編からなる短編集。
【富嶽百景】
軽妙な計算された言葉の運びで独特な情緒のある短編小説。太宰が自分の生活を建て直すため富士山麓へ転地旅行をして様子を綴った紀行文。
【津軽】
太宰治の本質が見出すことができる自伝的な紀行記。
大地に根差す真正の「人の心と人の心の触れ合ひを研究」する愛の、故土である津軽を生きた姿で掴み、軽妙な筆致で描き切った太宰治の代表作。
【正義と微笑】
太宰の年少の友の、実際の日記を素材とした作品で、太宰文学に珍しい明るく希望に満ちた青春小説。社会への門出にあたって揺れ動く中学生の内面、日記形式で巧みに表現された作品。
【新釈諸国噺】
第二次世界大戦下で書かれた作品。井原西鶴の簡潔な作品らを活かし、太宰独特の趣向を併せた作品。
【惜別】
偽善や革命運動家への疑問などを通して太宰自身の思想が色濃く反映されている作品。
【風の便り】
粋なユーモアを解した作品。
【冬の花火】
三幕物の戯曲。文学界に原子バクダンを投ずる意気込みと言われた自信作。
◆太宰治とは
作家 小説家
本名:津島修治
青森県下有数の大地主の子に生まれた。父・源右門は衆議院議員、貴族院議員。
17歳頃、習作『最後の太閤』を書き、また同人誌を発行。作家を志望するようになる。
弘前高校時代には泉鏡花や芥川龍之介の作品に傾倒する。
同人誌『細胞文芸』を発行すると辻島衆二の名で作品発表、井伏鱒二に指導を受ける。
このころは他に小菅銀吉、または本名でも文章を書いていた。
東京帝国大学に入学し、以降井伏鱒二に師事。
1933年(昭和8年)、短編『列車』でデビューし、
この作品で初めて太宰治の筆名を用いる。
処女作品集『晩年』を上梓してから入水自殺の日まで、多くの小説・随筆を書いた。
39年の生涯で5回自殺を図り、1948年(昭和23年)に玉川上水における愛人(山崎富栄)との入水心中により生命を絶つ。
二人の遺体が発見されたのは、奇しくも太宰の誕生日である6月19日のことであった。
この日は桜桃忌として知られ、三鷹の禅林寺を多くの愛好家が訪れる。
太宰治の出身地・青森県金木町でも桜桃忌の行事を行っていたが、生地金木には生誕を祝う祭りの方がふさわしいとして、生誕90周年となる1999年(平成11年)から「太宰治生誕祭」に名称を改めた。